FreshPaint のようにタッチによるズームが可能な Canvas を実現するには

Question

ズーミングを管理するコントロールである ScrollViewer の中に Canvas コントロールを配置すれば、ズーム可能な Canvas にすることができます。

<ScrollViewer
    x:Name="CanvasArea"
    Background="Gray"
    HorizontalScrollBarVisibility="Auto">
    <Canvas
        x:Name="ZoomableInkCanvas"
        Width="480"
        Height="360"
        Background="White"/>
</ScrollViewer>

この Canvas に Ink 機能を付与し、さらにタッチ操作による描画を許可するには、PointerPressed イベントハンドラで、ポインターがタッチ操作であることを判定し、Canvas の ManipulationMode を None に設定します。

private void ZoomableInkCanvas_PointerPressed(object sender, PointerRoutedEventArgs e)
{
    var pt = e.GetCurrentPoint(ZoomableInkCanvas);

    if (pt.PointerDevice.PointerDeviceType == PointerDeviceType.Touch)
        ZoomableInkCanvas.ManipulationMode = ManipulationModes.None;

    // インク機能の記述…
}

void ZoomableInkCanvas_PointerMoved(object sender, PointerRoutedEventArgs e)
{
    // インク機能の記述...
}

void ZoomableInkCanvas_PointerReleased(object sender, PointerRoutedEventArgs e)
{
    // インク機能の記述...

    if (ZoomableInkCanvas.ManipulationMode == ManipulationModes.None)
        ZoomableInkCanvas.ManipulationMode = ManipulationModes.System;
}

ここで、ScrollViewer 内に配置された Canvas に対してピンチ ジェスチャーによるズームを行おうとすると、ジェスチャーが Canvas に対するインク操作としてキャプチャされます。MSDN にあるサンプルコードでは Canvas を複数ポインターによるインク描画に対応させていないために、描画は正常に行われませんが、マルチタッチでの描画が目的ではないので、その点はここでは問題視しません。

マルチタッチの場合に描画処理を行わせないために、PointerPressed イベントハンドラで、イベントを発生させたポインターがプライマリ ポインターでないことを判定し、Canvas の ManipulationMode を System に設定しました。

private void ZoomableInkCanvas_PointerPressed(object sender, PointerRoutedEventArgs e)
{
    var pt = e.GetCurrentPoint(ZoomableInkCanvas);

    if (pt.Properties.IsPrimary)
    {
        ZoomableInkCanvas.ManipulationMode = ManipulationModes.None;
        _inkManager.ProcessPointerDown(pt);
        _penID = pt.PointerId;
    }
    else
        ZoomableInkCanvas.ManipulationMode = ManipulationModes.System;

    e.Handled = true;
}

ここまでのコードを実行させてみると、一本指タッチの場合には Canvas への描画が、マルチタッチの場合にはズーム操作が行えます。問題は、二本指によるタッチでズーム操作を行えない点です。

二本の指だけをタッチさせると、Canvas の ManipulationMode でピンチ ジェスチャーが許可されていてもズームができないようでした。この場合、一本目の指によるインク キャプチャと、二本目の指によるスクロール操作が検出されます。三本目の指をタッチさせると、二本目の指との間でピンチ ジェスチャーが検出され、Canvas をズームさせることができるようです。

また、PointerMoved イベントハンドラで、ポインターがプライマリ ポインターである場合に Canvas に対するマニピュレーションをキャンセルするコードを試してみました。

private void ZoomableInkCanvas_PointerPressed(object sender, PointerRoutedEventArgs e)
{
    var pt = e.GetCurrentPoint(ZoomableInkCanvas);

    if (pt.Properties.IsPrimary)
    {
        //ZoomableInkCanvas.ManipulationMode = ManipulationModes.None;
        _inkManager.ProcessPointerDown(pt);
        _penID = pt.PointerId;
    }
    //else
        //ZoomableInkCanvas.ManipulationMode = ManipulationModes.System;

    e.Handled = true;
}

void InkCanvas_PointerMoved(object sender, PointerRoutedEventArgs e)
{
    PointerPoint pt = e.GetCurrentPoint(ZoomableInkCanvas);
    if (pt.Properties.IsPrimary)
        ZoomableInkCanvas.CancelDirectManipulations(); // マニピュレーションのキャンセル

    // インク機能の記述...
}

void ZoomableInkCanvas_PointerReleased(object sender, PointerRoutedEventArgs e)
{
    // インク機能の記述...

    //if (ZoomableInkCanvas.ManipulationMode == ManipulationModes.None)
        //ZoomableInkCanvas.ManipulationMode = ManipulationModes.System;
}

このコードの場合、素直に指でパン ジェスチャーを行っただけでは PointerMoved イベント自体が発生せず、ScrollViewer に対してのスクロール操作であると解釈されます。Canvas 上で指をタップしたまま押さえるなどして、ScrollViewer にパン ジェスチャーとして認識されない程度にわずかなポインターの移動が発生した場合にのみ、PointerMoved イベントが発生します。

CancelDirectManipulations が実行されたあとは、そのポインターからはジェスチャーの読み取りが行われなくなり、指を素早く動かしても Canvas に対する PointerMoved として解釈されるようになりました。

US の MSDN フォーラムにあったこちらの質問も参考にしてみました。ManipulationDelta イベントを起点に ScrollViewer に対して ChangeView を行う方法と読めましたが、具体的にどういったコードになるかはいまいちつかめませんでした。

プライマリ ポインターである一本目の指もタッチ ジェスチャーを行えるポインターとして扱わせる、あるいは適切なタイミングで CancelDirectManipulations を行うためには、どういった記述が必要になるでしょうか。